抹茶というと、京都の宇治が知名度も高く代名詞のようにもなっていますが、愛知県の西尾市は、抹茶(原材料の碾茶)の生産量が全国の30%を占め、日本でも有数の生産地なんです。
特許庁が認定する抹茶の「地域ブランド」
西尾市を中心とする周辺地域で生産される抹茶は、「西尾の抹茶」として特許庁の地域ブランド(地域団体商標登録制度)に認定されています。茶の地域ブランドには「宇治茶」や「伊勢茶」が認定されていますが、抹茶に限定した地域ブランドとしては全国で初めてなんです。そういった意味でも、抹茶に限って言えば「西尾の抹茶」を意識したくなります。
地域ブランドで「地域の活性化」を狙う
「地域ブランド」とは特許庁より認定される商標で、その地域の特産物やサービスに対してブランド価値を高め、町興しや、地域活性化に役立てようという新しい制度です。西尾市では抹茶を通じて、新しい商品開発や、抹茶に関する情報発信、観光によるまちの活性など、地域を上げて新しい取り組みをしている様子が随所でうかがえます。
茶畑を一望できる「稲荷山茶園公園」は西尾茶の象徴
西尾市は西尾城(西条城)の城下町で、歴史的にも古い街です。地元で茶畑が見られるところを聞いてみると、市街地の西を流れる矢作川の左岸に位置する「稲荷山茶園公園」を教えてくれました。小高い丘の上にあり、公園から斜面一面に茶畑が広がるのが見られます。
西三河の温暖な気候と矢作川がもたらす豊かな土壌や川霧など、お茶作りに恵まれた風土で、特に稲荷山一帯は丘陵地で水捌けのよい砂質土壌のため、古くからお茶作りが盛んで、抹茶生産のルーツとなったお寺や、老舗の抹茶製造所が数多くあります。
抹茶の原料のとなる碾茶は「覆下栽培」
抹茶の原料となる碾茶は新芽が出る4月上旬~5月は覆下栽培(おおいしたさいばい)がされ、寒冷紗で覆いをし日光を遮ることで、栄養が枝の生長のために使われるため、茶葉は薄く柔らかくなり、抹茶に適した高級茶葉になるのです。
せっかくなので、真っ黒に覆われた茶畑も見てみたかった気がしますが、残念ながらこの時期は被覆がされていませんでした。
茶祖の寺「紅樹院」に歴史を感じる
稲荷山の南には、現在「茶祖の寺」とされている「紅樹院」があり、西尾茶の原樹が大切に残されているというので、歴史やルーツを実感しようと思い行ってみました。境内の一角にお茶の木が植えられ、立て看板には西尾茶の原樹である説明書きがありました。
竹垣で囲われはいましたが、案外無造作に植えられていたのは、ちょっと残念ではありますが、日本に抹茶が伝わったのは約800年前、西尾では740年前の鎌倉時代後期に茶種がまかれたことを思うと、感慨深いものはあります。
一度は口にしたことがあるはず「西尾の抹茶」
西尾の抹茶は、深く濃い緑、上質な香り、穏やかな旨味とコクが持ち味で、生産量はもちろんのことながら、品質でも群を抜いており品評会でも常に優れた成績をおさめています。自宅で抹茶を点てて飲むことは少ないですが、抹茶入りのお菓子やアイスやチョコレートは最近人気ですよね。
西尾の抹茶の90%以上は加工用原料として利用されていますので、抹茶入りの加工食品を食べるときに、原産地も意識してみてはいかがでしょうか。「西尾の抹茶」を一度は口にしていると思いますよ!
「西尾の抹茶」
http://www.nishionomattya.jp/index.html