鎌倉時代後期にはすでに抹茶の栽培を始め、2007年には特許庁から抹茶に限定した「地域ブランド」として認定された「西尾の抹茶」は、長い歴史を持ち、全国有数の生産量を誇ります。そんな愛知県西尾市には、由緒あるお茶室もあるのではないかと思い調べてみると、西尾市歴史公園内に書院と茶室からなる「旧近衛邸」がありました。
無料でお茶室を見学させてくれ、抹茶も飲ませてくれるようなので行ってみることにしました。
徳川氏お膝元の三河武士の地に、なぜ最上級貴族の近衛氏の旧家が!?
摂家筆頭として左大臣を務めた近衛忠房に嫁いだ夫人の縁で、江戸後期に島津家によって京都御所内に建てられたものが、宮家を離れ西尾の地に移築されたそうです。
どうやら、徳川家とも三河の地とも、なんの由縁もゆかりもなかったようです・・・。
公家らしい品格と工夫のある、明るく開放的なお茶室
建物奥にある六畳の茶室は、床框(とこがまち)は黒塗りでひときわ高く、花明窓が設けられとても明るい雰囲気の床の間です。
茶を点てる亭主が座る点前座の奥に床の間を構える「亭主床」(ていしゅどこ)と言われるスタイルを取っているのが特徴的で、小間の場合では珍しくないですが、六畳の広間でわざわざ亭主床にするあたりは、摂家の自負心とも言われています。
躙口にも公家らしい工夫がなされており、二枚一組の障子に見えますが、中央の横桟で上下にも分かれており、この横桟は取り外しができるのです。これは髪を結った頭がぶつからないようにするためだとか・・・。
茶室というと少し薄暗いイメージがありますが、とても明るく茶室の型にとらわれすぎないあたりは、お公家さんらしい遊び心をもったお茶室です。
庭園を眺めながら、黄金の茶碗で贅沢に一服
書院棚に飾られた「黄金の茶碗」。京都在住で清水焼伝統工芸師の加藤如水氏が制作したもので、希望すればこの贅沢感あふれるお茶碗で抹茶をいただくことができるのです。
この日のお抹茶は西尾抹茶の老舗「あいや」の【尾寿香の白】、お菓子は名古屋の和菓子の老舗「両口屋」の【見えぬ風】でした。
【寿香の白】は薄茶ですが、味は濃いめで渋味はあまり強くなく、口当たりが良かったです。この時期は冷たい抹茶も用意しているそうですが、抹茶とお菓子でお手頃価格の400円で、黄金茶碗を希望しても値段はかわりません。黄金色なので重そうに見えますがが、実際は普通のお茶碗と変わりない重さでした・・・。
京都とは違い、抹茶どころの西尾で公家のお茶室を見学し、のんびりと庭園を眺めながら美味しい抹茶を楽しめるのは、とても贅沢な時間を過ごせて満悦感がありますよ。
西尾市歴史公園【旧近衛邸】
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