緑茶のポリフェノール「カテキン」には、抗酸化作用や、免疫力を元気にしたり、脂肪吸収を抑える効果など多くのメリットがあることは知られていますが、「認知症予防の効果」についても研究結果が発表されています。
東北大学がおこなった研究では、高齢者からとったアンケートから1日2杯以上緑茶を飲んでいるグループは、週に3杯以下しか飲んでいないグループより認知障害が低く抑えられていると発表しています。この関連は、緑茶のみで紅茶、烏龍茶、コーヒーにはみられなかったようです。
<高齢者における緑茶と認知機能との関連について:東北大学>
http://www.pbhealth.med.tohoku.ac.jp/node/346
<緑茶摂取と認知症発生リスクの関連:東北大学>
http://www.pbhealth.med.tohoku.ac.jp/node/1042
金沢大学の研究では、緑茶を毎日1杯以上飲むグループは、まったく飲まないグループに比べると約5年後に認知機能が低下しているリスクが約1/3に減少したと発表しています。
<緑茶を飲む習慣と認知機能低下との関連を発見!:金沢大学>
http://www.kanazawa-u.ac.jp/rd/3458
毎日の食後に飲んでいる緑茶が、認知症の予防になっているとすれば、とても興味深い話です。
茶カテキンとDHAの同時摂取が認知機能の改善に
さらに、日本食品化学工学会誌では、お茶のカテキンと魚のDHAをいっしょに摂ることが高齢者の認知機能の改善にいいという論文も発表されています。
緑茶抽出物と魚油の6ヶ月間の同時摂取が、高齢者の認知機能と血漿脂質に与える影響について実験した。
緑茶抽出物と魚油の同時摂取、摂取前に比べて、6か月後の知能評価スケールを有意に改善した。また、緑茶抽出物と魚油摂取群の6か月後の知能評価スケールの増加は、プラセボ群に比較して、有意に高かった。これらの事から、緑茶抽出物と魚油の同時摂取は、高齢者の認知機能を改善している可能性が示唆された。<緑茶抽出物と魚油の同時摂取が高齢者の認知機能と血漿脂質に与える影響>
日本食品科学工学会誌 Vol. 62 (2015) No. 2 p. 88-94
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk/62/2/62_88/_article/-char/ja/
これは緑茶のカテキンが認知症の【予防】だけでなく、DHAとの同時摂取で、【改善の可能性】があることも示しているところがとても興味深いところです。
この実験で1日に摂取したカテキンとDHAの量を論文で見てみると、
魚油は1日当り3g(DHA 約0.7g含有)を朝食時に味噌汁に添加して投与した。緑茶抽出物は0.5 g(カテキンを80%以上含有し,脱カフェインの粉末)をオブラートに包み,朝食後30分以内に,水とともに投与した。
これは、
魚のDHA:700mg
お茶カテキン:400mg
を一日一回同時に摂取したことになります。
カテキン400mg。どのくらいお茶飲めばいい?
カテキン400mgが実際にどのくらいかというと、ペットボトルのお茶の場合、お〜いお茶なら2本、お〜お茶濃い茶なら1本分です。
・お〜いお茶:200mg/500ml
・お〜いお茶濃い茶:400mg/500ml
(伊藤園商品成分表一覧)
茶葉から急須でいれる煎茶の場合なら、湯呑み一杯(150ml)の緑茶に含まれるカテキン量は、70mg程度なので、湯呑み6杯程度です。
食事の時に緑茶を飲むことが習慣になっていれば、1回の食事で2杯くらいは飲んでいることを考えると、400mg程度のカテキンは毎日自然に摂取していることになります。
DHA700mg。どのくらい魚を食べればいい?
一方、魚のDHA 700mg。
DHAは、EPAとともに血液をさらさらにするなどとして注目されている不飽和脂肪酸。サプリメントなどでもDHA/EPAのサプリは多く利用している方もおおいはずです。魚の場合、主に青魚にDHAは多く含まれているといわれています。
文部省の「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」でDHAが多く含まれる魚を調べてみると、このような感じです。
魚の可食部100gに含まれるDHAの含有量比較(mg)
魚の種類 | DHA量(mg/100g) |
---|---|
まぐろ(本マグロ)のトロ | 3200mg |
ぶり 焼き | 1900mg |
さば(マサバ) 焼き | 1500mg |
鮭(銀) 焼き | 1500mg |
トラウトサーモン(にじます)生 | 1300mg |
さんま 焼き | 1200mg |
さわら 焼き | 1200mg |
いわし 焼き | 980mg |
かつお 秋穫り 生 | 970mg |
あじ 焼き | 820mg |
たい(まだい) 皮付き生 | 780mg |
<日本食品標準成分表2015年版(七訂) 脂肪酸成分表編>
可食部100 g当たりの脂肪酸成分表(脂肪酸組成表)
http://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365451.htm
まぐろのトロの3200mgはダントツですが、700mgのDHAであれば、「ぶり」や「さば」など、普段からよくたべる魚100gから摂取できることがよくわかりますね。
成分表を見ていてちょっと、驚いたのが、同じ魚でも部位や種類によってDHA量がずいぶんとちがうこと。まぐろは、トロと赤身では30倍近く、鮭も白鮭と銀鮭では3倍近くも差があるので、よく知った上で上手に選びたいもの。
まぐろ(本まぐろ) | DHA量(mg/100g) |
---|---|
トロ | 3200mg |
赤身 | 120mg |
鮭 | DHA量(mg/100g) |
---|---|
銀鮭 焼き | 1500mg |
紅鮭 焼き | 600mg |
白鮭 焼き | 510mg |
かつお | DHA量(mg/100g) |
---|---|
秋穫り 生 | 970mg |
春穫り 生 | 88mg |
緑茶のカテキンと、魚のDHAをいっしょに摂取すると認知症予防や改善にもいいとされる話。
鮨にお茶。鮭のおにぎりにお茶。などはとても良さそうですし、なにより「ごはんとみそ汁に焼き魚、食後には渋めの煎茶」という昔からある日本の朝食は実はとてもいいということですね。
毎食に魚を食べることは難しいかもしれませんが、食後には緑茶を必ず飲む習慣を続けていれば、魚との組み合わせも自然に増えるはず。
多くのメリットがある茶カテキン、毎食の緑茶習慣は続けたいものです。
今日もお茶で素敵な一日を。